JSK通信

親からの相続で学んだこと!

代表取締役 上能 喜久治

 

人の道を外してはならない

 

今年の相続税発生分から基礎控除額が大幅に引き下げられ、相続税を申告納税しなければならない人が大きく増えることが予想されています。そのため今、相続税対策セミナーには多くの受講者が集まっています。

 私の母が昨年7月に亡くなり、今月の5月に相続税の申告納税時期を迎えます。私自身の相続体験からいくつかの学びがありました。

 まず一つはいまから20年以上前、母が70歳の時に会社で生命保険に加入しておこう、と保険代理店の人に相談しました。相続税の納税資金対策を目的とした保険でその代理店の営業マンから「会社で生命保険契約をするのであれば90歳定期保険をお勧めします。保険料は最終的に全額経費になります。」と言われました。その生命保険の商品は母が90歳までに亡くなれば保険金が下りる。ただし90歳以上長生きすれば保険金は一円も下りない、というものでした。私はその営業マンに「そのような生命保険に息子として契約することはできない。母が90歳までに亡くなれば保険金はもらえるが90歳以上長生きすれば保険金はない。そのような保険ではなく百歳でも長生きしても下りる保険はありませんか?」と尋ねました。すると「終身保険があります。ただしその保険料は一切、経費にはなりませんよ。」と言われました。保険料が経費になろうがなろまいが親が早く亡くなれば得をする、というのは人の道に外れています。結局、母は93歳の天寿を全うしました。そして終身保険の保険金は母の除籍謄本と死亡診断書を保険会社に送付するとすぐに保険金が会社に入ってきました。

 

 

遺産分割で思ったこと

 

 昭和56年、私が30歳の時に父を亡くしました。母は父の遺産の約半分を相続しました。その母の遺産を私たち兄弟三人で相続するに当たり、協議しました。その話し合いは約10分で終わりました。兄と姉がそれぞれ欲しい遺産を言い、私はその残りの遺産をいただくことになりました。結局、私の遺産額が一番少なくなりましたがそれで十分でした。両親からはこの健康なわが身をいただきました。目が見える、耳が聞こえる、指が動く、足で歩ける。これ以上、何を親に求めるのでしょうか?稼ごうと思えばいくらでも稼げるのです。親が残していただいた財産に文句を言えばバチがあたります。この世に命を授かり、育てていただいた。ただそれだけで感謝しかありません。それにも拘らず、財産まで残していただいた。この財産は私が使うことなく、私の子や孫に残すつもりでいます。“親先祖からいただいた財産である”ということをしっかりと伝えておきます。親からの遺産が多かったから得をした。そのような損得ではありません。あなたが経営者なら親の遺産をアテにすることなく、自分で稼ぐことができる立場にあることに感謝と喜びを感じて下さい。