JSK通信

桜の花と人の一生

代表取締役 上能 喜久治

桜の名所はいつまでも桜の名所ではない!

 

 私は今、67歳ですが65歳から70歳までの5年間に桜の名所百ヵ所、紅葉の名所百ヵ所、温泉百ヵ所に行こう、という計画を立て、進めています。ただ桜も紅葉もその時期が短く、必ずしもベストの時期にはなかなか行けません。毎年、その年に訪れた桜の名所の中から自分の中でランクを付けて第一位をその年の“チェリーオブザイヤー”と言っています。ちなみに昨年の“チェリーオブザイヤー”は東京の国立劇場の入口にある5,6本の神代桜としました。朝早く予約しておいたタクシーに乗って東京地方の標準木がある靖国神社へ行き、その後、すぐ近くの千鳥ヶ淵に行きました。そのタクシーで宿泊しているホテルに戻ろうとすると、向い側の国立劇場入口の桜が目に留まりました。タクシーをUターンしていただきその桜の花のすばらしさに感動しました。ふと見ると「神代桜」という名札が立っていました。桜の名所という訳でもなく、訪れる人も少ないですが、それでも色といい、大きさといい、最高の桜でした。
 今年の“チェリーオブザイヤー”は鳥取県米子市にある米子コンベンションセンター入口に咲いていた一本桜です。今年も九州・四国・東北等に桜を追いかけて行きましたが名もなきその一本桜が堂々と威容を誇っていました。
 この3年間、「桜の名所100選」を中心に日本各地を訪れましたが、その桜の木を見ていると老木が多く、その枝には支え棒があったりします。全国には名もなき桜の名所が多く存在し、その発掘も面白く楽しくなってきました。
 つまり、桜の名所はいつまでも桜の名所であり続けることはなく、100選も変わっていくものです。樹齢を重ね、その桜の栄えの時を過ぎ、やがて寿命がきます。桜の名所と言われるところもその対策として若い桜を植えていっていますが何となく不揃いの感じがします。

 

他人を憎んだり妬んだりする時間はない!

 

 桜も人も会社も寿命があります。そのことを嘆く必要はありません。限りある命だからこそ、今を精一杯に生きようとするのです。春に桜のつぼみがふくらみ、3分咲き、5分咲きをへて、やがて満開です。それから一週間もすると早くも散り始めます。その桜吹雪の時が最高にすばらしいのです。その桜吹雪を見ながら、その散った花びらが川面や湖面に漂う姿を見て、人の一生と重ね合わせるのでしょう。桜の花の時期の短さ、最高に華やかな満開の時をすぎ、やがて散りゆくはかなさに自分の人生を見ます。人の一生も永いようで短いものです。その短い人生に人を恨んだり、妬んだりする時間はありません。やがて桜の花が散っていくように短い人生だからこそ精一杯、世のため人のためにお役に立ちたいものです。