JSK通信

使命感に燃えて

代表取締役 上能 喜久治


一件の契約にも繋がらなかったが・・・!

 

 私が6坪の会計事務所を開業したのが昭和63年の7月でした。それから10年が経とうとする頃にプロ野球脱税事件が起こり、連日テレビや新聞で大きく報道されました。その報道を見て、税理士である私はいても立ってもいられなくなり、当時の在阪3球団(阪神・近鉄・オリックス)に訪問しようとしました。球団事務所の所在地を調べ、まず難波にあった近鉄の球団事務所に行きました。アポ無し、伝手無しの訪問です。私が行くと選手たちの契約更改の時期で多くのマスコミ関係者でごった返していました。その中をかき分けて球団の担当者とお話しができました。「プロ野球選手の脱税事件が今、毎日のように報道されています。プロ野球選手は野球少年のあこがれの的であり、そのプロ野球選手が社会人としてあるまじき脱税事件を起こしている。私は税理士としてプロ野球選手の正しい税務申告をさせていただきたい。野球少年たちの夢を壊さないでいただきたい。」ということを言いました。また、その後日、甲子園球場の裏手にあった阪神球団にも訪問し、同じようなことをお話ししました。残念ながら一件の成果もありませんでした。対応して頂いた球団職員の方に最後に次のようにお尋ねしました。
 「私のようにプロ野球選手の正しい税務申告をさせていただきたい、と言って来られた税理士はおられますか?」すると球団職員の方は「だれも、どなたも来ていません。あなただけですよ。」と言われました。その当時、毎日大きく報道されていたのに誰一人として行動していないのです。結果として二つの球団事務所を訪れ、一件の成果もありませんでした。しかし、成果を求めて訪問したのではありません。税理士としての使命感に燃えて訪問させていただきました。私は今でもこのことについて大きな誇りを感じています。

 

使命感を持って仕事をすれば・・・

 

 使命感を燃やす”とは職業を通じてどのようにして世の中に貢献していくのか?仕事をしていて如何にお客様や取引先に喜んでいただけるのか?を常に考えながら働くことです。自分の職業に使命感がなければ単に売上があがればいい、儲かればいいということになってしまいます。また成果(売上や利益)だけを求めて会社経営をしていると「あの社長は自社の売上に繋がることしかしない。」「あの会社は自社の利益になることしかしない。」とケチのレッテルを貼られてしまいます。売上や利益に繋がらなくてもそれが世のため人のためになるならやる。例え一円の売上にならないことでも使命感に燃えて一所懸命にやる。


人は見ています。世間は知っています。


一円の売上に繋がらないことを一所懸命にしているとやがて大きな売上や受注に繋がるのです。